狂牛病は危険性が少ない感染症だった?!なぜ不安は広がったの?
狂牛病はBSEプリオンという病原体に牛が感染し挙動が不安定になり死に至る病気です。このBSEに感染した牛肉がイギリスやアメリカで発覚し、人が感染すると健康被害は甚大であるとして世界各国のマスコミが報道しました。政府と国民生活を巻き込み、経済にも影響を与えた一連のこの騒動はBSE問題と呼ばれています。
狂牛病とは?BSE問題って何?
狂牛病はウシが狂ったような挙動をすることから名付けられた俗称です。正式には牛海綿状脳症(BSE)と称されます。
日本では2000年代初めにこのBSEに感染した牛肉がアメリカから輸入されたことが発覚したことで、連日のように報道されました。この一連の騒動は一般的にBSE問題と呼ばれます。
アメリカからの牛肉の輸入量の規制、国内の牛肉価格の高騰など政府と国民生活を巻き込んだ騒動は日本だけでなくアメリカ、イギリスなど各国で起こり、世界的な牛肉の輸出入問題に発展しました。
この狂牛病は感染症でウシの脳の一部に異常をきたすもので、感染したウシの肉を食べると人間にも甚大な健康被害があるとマスコミが大々的に報道したことで、事態はますます混乱しました。
なぜ不安は広がったか?
結局、牛海綿状脳症(BSE)に感染したウシは日本では10頭未満、人への感染者はゼロでした。しかし、狂牛病に感染したウシがいると報道された農家や、狂牛病と診断した獣医師ら5人が自殺するという大きな被害を生みました。
実被害よりも風評被害、二次被害がこれほど多くなった原因はいくつかあります。
1つは牛海綿状脳症(BSE)の検査方法が確立されていなかったこと、病気の性質が明らかになっていなかったことです。
さらにウシが感染した場合、治療法はなく、感染したウシを含め感染の可能性のあるウシもすべて殺処分となるなど、壮絶な対処法も多くの人の不安を煽りました。
このように不明なことが多かった病気である上に、人に感染した場合には致命的な健康被害になると報道されことも不安が広がった要因です。
当初は牛肉全体が危険とみなされ、感染の心配のない部位でも消費者の買い控えが起こり、経済的にも大きな影響を与えました。この不安が急激に国内に広がった原因は過熱報道にあったとされています。
しかし、このような過熱報道は日本だけでなくアメリカやイギリスなど各国でも行われており、世界的にBSE問題が話題になりました。
実はそれほど危険ではなかった?!
現在、WHO(世界保健機構)は狂牛病について、感染する可能性が低いため緊急度や危険度が低い疾病と認定しています。あれほど世界的に騒がれたのに、その危険性が低かったとは信じられないことです。
しかし、この問題から報道のあり方の他、家畜の育てられ方にも注目が集まるきっかけになりました。
ウシはウシを食べさせられていた!
日本ではあまり話題になりませんでしたが、アメリカやイギリスではウシの育てられ方に大きな波紋が広がりました。
その理由はウシは肉骨粉と呼ばれるエサを与えられていたこと、そしてそれが病気感染の拡大の原因になっていることがわかったからです。
肉骨粉とはウシ、ブタ、トリなどの屑肉や脊髄、内臓を加熱処理して乾燥させ、細かく砕いたものです。高い栄養価があり、また一般の寄生虫や雑菌は加熱によって死滅するため安全性の高いエサとして農家で広く使用されていました。
しかし、問題の狂牛病を発症させる要因として注目されている異常プリオンは加熱によって死ぬことはないため、狂牛病に感染したウシが肉骨粉にされた場合、感染が拡大する可能性が高まることが専門家の調べで明らかになりました。
このような安全面の問題以上に、一般市民は「ウシにウシを食べさせていた」という同族喰いをさせていたことに嫌悪感を抱く声が多数挙がりました。また、一部では同種喰いが病気を引き起こす一因ではないかと見られています。
現在、病気についてどこまでわかっているのか?
BSE問題が発覚した当初、有効な治療法がないと言われていました。しかし、その後、研究が進み、異常プリオンの性質や感染の特徴などが明らかにされてきました。
現在は感染した場合に血液中から異常プリオンを取り除く方法が研究されており、実用化に向けて実験が繰り返されているようです。