さい帯血移植のドナーを募る、さい帯血バンクとは?
さい帯血バンクとは、妊娠している女性から取れる「さい帯血」を凍結保存して、移植を希望する人に提供している機関です。さい帯血バンクに登録するには、さい帯血バンクが契約している産科病院で出産する必要があります。
さい帯血を提供するには?
「へその緒」と呼ばれるさい帯は、お母さんと赤ちゃんを結んでおり、さい帯血は胎盤の中に含まれている血液を指します。なお、さい帯血はお母さんの血液ではなく、産まれてくる赤ちゃんの血液です。
出産後、さい帯は必要なくなりますが、血液細胞を作り出すもとになる「造血幹細胞」が含まれており、造血幹細胞は、白血病や再生不良性貧血などの血液の病気にかかっている人や遺伝病にかかった人などの治療に役立ちます。
さい帯血バンクとは、このさい帯血を採取、凍結保存して、移植を希望する人に提供する機関です。さい帯血を提供するのは妊娠している女性で、さい帯血バンクが契約している産科病院に登録することで、さい帯血を提供できます。
出産後にさい帯血を採取
さい帯血バンクに登録した妊婦さんは、出産後に産科病院でさい帯血を採取されます。赤ちゃんを出産するとさい帯は切り離されて、さい帯血はそのさい帯から採取されますから、お母さんと赤ちゃんに影響はありません。
ただ、さい帯と胎盤はお母さんの体内に残っているため、取り出す前にさい帯血をさい帯から採取する必要があります。採取は2~3分ぐらいで終わり、終わった後にお母さんの体外に取り出されます。
妊婦さんは、感染症がないかどうかの血液検査を受けて、問題がなければさい帯血はすぐに、さい帯血バンクへと運ばれます。さい帯血バンクに保存されたさい帯血は、10年間移植用として使われます。
さい帯血を採取できないケース
さい帯血は、どんな場合でも採取できるかというと、出産のタイミングが合わない場合に、採取できないことがあるようです。
たとえば、早産の場合や、採取の準備が間に合わないような場合です。さい帯血の採取には準備が必要なことから、急なお産の場合には採取できないことがあります。提供できないからといって、登録した妊婦さんが責任を問われるようなことはありません。
また、さい帯血を採取した赤ちゃんが何か先天的な病気にかかっているような場合に、採取を取り消されるようなケースもあるようです。産科病院では、出産後の赤ちゃんの健康状態についても検査しています。
さい帯血の移植を受けるには?
白血病や再生不良性貧血などの血液の病気にかかっている人が、病気を治す方法に骨髄移植がありますが、条件が合わずに骨髄移植を受けられない場合もあります。
そのような患者さんを治す可能性があるのが、さい帯血の移植です。
移植方法ですが、さい帯血の移植を希望する患者さんが入院している病院に、冷凍保存されたさい帯血が運ばれて、それを解凍して患者さんに注射します。移植したさい帯血が新しい血液を作り出せれば、移植は成功となります。
なお、さい帯血を採取した本人だからといって、移植が必要になった時に優先的に移植されるというようなことはないようです。
期待されるさい帯血移植
これまで行われてきた骨髄移植は、ドナー提供者に全身麻酔をかけて骨髄を採取するという大きな手術が必要でしたが、さい帯血移植では、すでにさい帯血バンクが凍結保存しているさい帯血を使うだけなので、負担がかかりません。
また、骨髄移植では、白血球の型である「HLA(ヒト白血球型抗原)」の一致が難しいというのがありますが、さい帯血移植の場合は、すべて一致しなくても移植できるということです。これらのことから、骨髄移植からさい帯血移植へと利用が広がってきています。
ただ、日本は少子化で生まれる子供の数が減ってきており、胎児から取れるさい帯はひとつなので、採取する量が少量であることから、分量が足りない場合があります。