高層階で心臓停止 高層階に住むほど心臓停止の死亡確率が増加する?
天空にそびえ立つタワーマンション。眺めがよかったり、蚊などの害虫がよってこないため人気の物件となっていますが、高層階で心臓停止をした場合、死亡する確率が高いことをご存じですか?どれだけ眺望が良くても、害虫の被害を受けなくても、死したのでは意味がありません。高層階と心肺停止死の関係について紹介します。
高層階で心臓停止をすると危険なの?
カナダのあるグループの研究で、高層階で心臓停止をして生き延びる確率は、低層階に住んでいる住民と比較して低いということが分かりました。
どのような研究が行われたのかをご紹介しましょう。
高層階で心臓停止 生存率は25階以上で0%
2016年1月18日に発行されたカナダの医師会誌で、高層階で心臓停止をして生きて退院できた割合が、16階以上で0.9%、25階以上で0%であったことが発表されました。1階や2階に住んでいる人の生存率は4.2%となっています。
この研究は、2007年から2012年にトロント市で心肺停止を起こした8,216人の方を対象として行われました。25階以上に住んでいて心肺停止を起こした30人の方は、生存者がいなかったのです。
高層階で心臓停止を起こすとなぜ生存率が低くなる?
高層階で心臓停止を起こしてしまうと、どうして生存率が低くなってしまうのでしょうか。
それは、高層階で心臓停止を起こすと、救急士が現場にたどり着くまでに時間が掛かってしまい、人工呼吸や心臓マッサージなどのケアをするまでに時間を要します。
公共住宅地にはAEDの設置がされているケースが多いのですが、カナダの研究ではAEDを使っているケースが1%もありませんでした。
【救急士が遅れる原因】
高層階で心臓停止を起こして通報があったけれど、高層階へ救急士の到着が遅れる原因は、エレベーターが途中停止を起こしたり、駐車場のゲートバーや暗証番号が必要なエントランスなど、様々な要因があります。
心肺停止が起こってから脳に3、4分酸素が送られないと、助かった場合でも後遺症が残る恐れがあります。脳に酸素が10分送られないと、ほとんど助からないことになります。
高層階で心臓停止が起こった場合、助かるためには?
日本でも高層マンションに住む住人達が増えているため、高層階で心臓停止が起こることを予測して対処しなければいけません。マンションの管理者は、どのような点に気を付ければよいのでしょうか?
【AEDの設置】
AEDの設置によって、迅速な除細動の効果があり、心肺停止を起こした場合にでも心肺蘇生が可能となります。
ただ、AEDを設置しただけではいざという時の使い方が分からないため、AEDを使った一次救命処置の手順など、講習会を行うことも大切です。
【専門エレベーターの設置】
救急士が早く現場にたどり着くことができるように、ストレッチャーが収まるようなエレベーターの設置をすることが必要です。
また、救急士が到着した時にすぐに高層階へ行けるように、到着前にエレベーターを1階に呼ぶなどの措置をとることも大切です。
一次救命処置のやり方
万が一のために、一次救命処置の手順を勉強しておきましょう。
【呼吸確認】
呼吸をしているかを確認し、呼吸停止の場合は胸骨圧迫を行います。
【心臓マッサージ】
胸骨の下の部分に手をあてて、胸が5cm程度沈む程度に1分間に100回の早さで心臓マッサージをします。
【人工呼吸】
片手で額を、もう一方の手で顎を持ち上げて鼻をつまんで息を2回吹き込みます。人工呼吸2回に対して心臓マッサージ30回を1セットとして、息を吹き返すまで繰り返して行います。
【ADEによる電気ショック】
ADEの電源を入れて、電極パッドを胸に貼ります。電気ショックが必要であれば指示が出るため、その指示に従って、呼吸停止を起こした人に触っている人がいないかを確認して通電ボタンを押します。
その後も、救急士が到着するまで人工呼吸と心臓マッサージを繰り返します。