トラウマ的体験の後ってどうなるの?トラウマの後遺症について考えてみよう!
恐ろしい出来事の体験や目撃は人の心や記憶に強く根付いてしまうものです。そのようなトラウマ的な体験の後には「また同じことが起こるのではないか」などというような恐怖が付きまとってしまう可能性も。トラウマの後遺症とはどのようなものがあるのか、また後遺症の治療法などについてご紹介します。
そもそもトラウマって何?
トラウマ(trauma)とは日本語で「心的外傷」のことです。
心が処理できる範囲を超えた、ショッキングな出来事を目の当たりにしたり体験することで生じる、深い心の傷のことを心的外傷 = トラウマといいます。
トラウマの記憶は自分の意思ではどうすることもできないため、長い間苦しみ続けるつらい記憶となります。
トラウマ的体験ってどんなものがあるのでしょう?
専門家が用いる診断基準には
実際に、または危うく、死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれかの1つの形による曝露
(1)心的外傷的出来事を直接体験する
(2)他人に起こった出来事を直に目撃する
(3)近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする
(4)心的外傷的出来事の強い不快感を抱く細部に、繰り返しまたは極端に暴露される体験をする
とあります。具体的には戦争やテロ、犯罪や事故、自然災害、性的暴力や家庭内暴力、児童虐待などがあげられます。このように様々な出来事がトラウマ的体験になりうるのです。
トラウマ的体験の後に起こることとは?
もし私たちが先に挙げたような出来事を体験したり目撃した場合、その後にはどのような症状が出てくるのでしょう?
現在、世間で比較的よく耳にするようになった「PTSD」という障害、まさにこれこそがトラウマの後遺症として挙げられる症状なのです。
「PTSD」の日本語名は「心的外傷後ストレス障害」。
まさに字のごとく、心的外傷の後に起こるストレス障害のことを指しています。「PTSD」かどうかという診断は非常に難しいため、過小評価や過大評価がされやすいという事実もあり、難しい障害となっています。
「PTSD」という病気
「PTSD」の症状はいくつか存在します。
その1つは侵入症状。苦痛を伴う記憶が意思と無関係に繰り返し思い出されたり、夢として苦痛なものを見たり、フラッシュバックのような解離症状が表れる場合が、侵入症状として挙げられます。
さらに持続的回避と言って、苦痛な記憶や感情から回避したり、そのような苦痛な記憶に起因するもの自体を回避する症状も。
1つの急性ストレスによって生じるPTSDは単純型、長期にわたって繰り返す慢性ストレスにより生じるPTSDは複雑型ともいえます。
単純型のPTSDは主に犯罪被害や事故、災害などから引き起こされ、複雑型のPTSDは児童虐待や性的虐待などから引き起こされます。
PTSDの治療法とは?
一度トラウマ的な体験をしてしまうと、誰しもそう簡単には克服できないもの。
それではPTSDになると一生苦しまなくてはいけないのでしょうか?その答えは「NO」です。薬物療法や認知行動療法といった複数の方法で、PTSDの治療が可能です。
「薬での治療はわかるけど認知行動療法って?」と疑問に思った方もいるはず。
この認知行動療法という治療法は主に「長期持続曝露」や「認知再構成」といわれる、トラウマを起こした体験をわざと思い出してもらう方法で、患者が積極的に症状と向き合っていく内容となっているのが特徴です。
中でも「持続的曝露」はPTSD患者にとって、とても大切な治療方法です。「持続的曝露」ではPTSD患者が実際に恐怖を抱いている場面や状況に、患者自身を長い時間体験させ、トラウマ体験を回避せずに物語ることで、恐怖反応の低下やトラウマ的な記憶の再体験を減らすようにします。
荒療治とも思えるこの方法は、実は患者にとって効果的なんだそうです。トラウマ的な体験は、他者に話すことなく自己の中に秘めていると「早く整理をして」というように無意識に訴えかけてくるため、トラウマとして再体験されるんだとか。
つまり、トラウマ的な記憶や体験を、自ら細部まで物語ることによって症状は低減していくのです。
1人で苦しまないで!
どのような体験でも、人によってはトラウマ的な体験になってしまうもの。PTSDかどうかという判断は専門医にしかできません。
まずは病院へ行くことが後遺症とうまく付き合っていく上では大切です。またPTSDに限らず、つらい出来事は友人や親など、誰かほかの人へ話すことによって快方へ向かうはず。
1人で悩まずに周りの人を頼ることが、トラウマの後遺症を改善していく第一歩となるのではないでしょうか?